インサイダー取引とは①会社関係者等が②重要事実を知って、③(重要事実の)公表前に④株券等の売買等を行うことをいいます。
①会社関係者等
会社関係者等とは、以下(1)〜(6)に該当した場合をいいます。
(1)上場会社等(親会社・子会社を含む。以下同じ)の役員、代理人、使用人その他従業員
その者の職務に関し、重要事実を知った場合
(具体例)
上場会社の監査役 上場会社の経営企画部所属の社員
(2)上場会社の帳簿閲覧権を有する株主等
会社法上の帳簿閲覧権の行使に関し、重要事実を知った場合
(具体例)
総株主の議決権の3%以上または発行済み株式の3%以上を保有する株主
(3)上場会社に対して法令に基づく権限を有する者
権限の行使に関し、重要事実を知った場合
(具体例)
上場会社に対し、許認可の権限や立入検査や調査を行う権限を有する監督官庁に勤務する公務員等
(4)上場会社と契約を締結している者・契約締結交渉中の関係者
契約締結、交渉または履行に関し、重要事実を知った場合
(具体例)
取引先社員・顧問弁護士・会計監査人・顧問税理士・証券会社社員等
(5)上記(2)(4)が法人である場合、当該法人の他の役員および従業員等
その者の職務に関し、重要事実を知った場合
(6)上記(1)〜(5)に該当しなくなってから1年を経過していない者
会社関係者でなくなってから1年間経過するまではインサイダー取引規制の対象となります。
(具体例)
上場会社の監査役を退任して1年以内の退職者
重要事実を知っている場合は、契約社員、派遣社員、パートタイマーなど、雇用形態にかかわらず「会社関係者」となります。
上記(1)〜(6)に該当する者から重要事実の伝達を受けた「情報受領者」もインサイダー取引規制の対象になります。また「情報受領者」と同一法人の役員または従業員がその者の職務に関し、重要事実を知った場合もインサイダー取引規制の対象となります。
②重要事実を知って
重要事実とは、(1)決定事実 (2)発生事実 (3)決算情報 (4)その他(バスケット条項)をいいます。ただし、内閣府令に定められた軽微基準(下記「軽微基準とは」参照)に該当する場合は重要事実から除外されます。
(1)決定事実
会社の意思決定に係る重要事実
(具体例)
新株発行、資本減少、自己株式取得、株式分割、増配・減配、合併、会社分割、株式交換・移転、事業の全部または一部の譲受・譲渡、業務提携、新製品の販売、新規事業の開始
(2)発生事実
会社の意思に関係なく発生した重要事実
(具体例)
災害による損害、主要株主の異動、法令に基づく処分
(3)決算情報
会社の決算に関する重要事実
(具体例)
売上高・経常利益・純利益等の業績(予想)の修正
(4)その他(バスケット条項)
会社の運営、業務または財産に関し、投資者の投資判断に影響を及ぼすもの
(具体例)
製薬会社の薬の副作用、会社の不祥事、粉飾決算
軽微基準とは
重要事実の中には、投資家の投資判断に及ぼす影響が少ないものも含まれております。一定の基準に満たない情報は軽微基準として、重要事実に該当いたしません。
(具体例)
売上高の増減が10%未満の場合、純利益の増減が30%未満の場合、配当金額の増減が20%未満の場合、新製品・新技術の開発で売上高の増加率見込みが10%未満の場合
重要事実の決定時期
「重要事実」の決定時期は、取締役会等での機関決定だけとはかぎりません。たとえ、検討の初期段階でも会社の業務執行を実質的に決定する権限を持っている者(業務執行を決定する機関)が当該行為の準備を指示した場合は、事実上の「重要事実」が決定されたものと見なされる可能性があります。
③(重要事実の)公表前に
「公表」とは以下(1)〜(3)のケースのことをいいます。
- 上場会社が上場する証券取引所に対して「重要事実」を通知し、当該証券取引所において電磁的方法(適時開示情報閲覧サービス)により公衆の縦覧に供された場合(「適時開示情報サービス」に掲載されると同時に規制が解除されます)
- 上場会社の役員または当該役員から委任された者が「重要事実」について、法令で定められている2つ以上の報道機関に公開した時から12時間経過した場合
- 「重要事実」に係る事項が記載された有価証券報告書、半期報告書、臨時報告書、その他訂正報告書等が公衆の縦覧に供された場合
自社のホームページへの掲載は「公表」に該当しません
上場会社自身のホームページに「重要事実」を掲載することだけでは、法令上の公表には該当いたしません。
速報性が高いものとしては、上記(1)の「適時開示情報サービス」が挙げられます。「適時開示情報サービス」は、上場会社がTDnetを通じて開示した会社情報について、インサイダー取引規制を解除するための「公表」措置を充足するための証券取引所のサイトです。
④株券等の売買等を行う
(1)株券等とは
株券等には株券、新株予約権付証券、社債券、優先出資証券 等が挙げられます。またREITなどの投資証券も株券等に含まれます。
(2)売買等とは
株券等に係る売買その他有償の譲渡※もしくは譲受、デリバティブ取引をいいます。
- 「有償の譲渡」とは、無償贈与等以外の有償の財産移転行為をいいます。
ストックオプションの権利行使に伴う上場株式の取得は、インサイダー取引の規制対象外になりますが、取得した株式を売却する際はインサイダー取引の規制対象になります。